先日の記事、「『美人だね』と言われて怒る人」の続きです。
先日は大人について、誰かの言葉を受け取る際に意味づけをしているというお話しを書きましたが、ではコミュニケーションにおける赤ちゃんや、幼い子の場合はどうでしょうか。
赤ちゃんや幼い子は、知っている語彙が少ないために、言葉での表現方法は大人ほど豊富ではありません。
しかし、いくら小さくたって大人と同様に、投げかけられる言葉は毎日受け取っています。
ただ、言葉の受け取り方は大人のそれとは少し違っているようです。
幼い子は言葉の意味を知らない分、その言葉の持つエネルギーというか、真意をとらえるのがとても上手。
だからこそ、大人が新たに言語を習得する際、理論的に文法や意味を知ろうとするのに対し、幼い子は言葉の持つエネルギーを直に感じ取って、感覚的にぐいぐい吸収していくのだと思います。
私は自分が0歳児のとき、ハイハイ時期からの記憶がいくつかあるのですが、その中のひとつがこれ。
太陽が燦々と照る暖かな日に、ベビーカーに乗せられ、姉と母とお出かけしたときのこと。
私は少し歩いてはいましたが、多分、まだ言葉を発する時期ではなかったのだと思います。
ベビーカーから下りて、立ち上がった時に聞こえてきた姉の声。
私を指差して、「でべそ!」と言っています。
私はこのとき、「でべそ」の意味が分からずにいました。
しかし、その言葉から刺さるような、とてもイヤな感じを受け取ってしまい、その場に立ち尽くして姉と母の方を見つめていました。
「なんだろうこの言葉、でべそって何なのかな、私のこと言ってる・・・・・」
という、心配にも似た感情を持ったことを、今でもありありと思い出すことができます。
救いだったのは、姉の言葉を受けての母の言葉。
母は姉に対し、こう言いました。
「赤ちゃんはね、みんな、お腹が出てるの。あなたも赤ちゃんだった時は、そうだったのよ。」
この母の言葉を聞いた私は、
「でべそって、お腹が出てるっていう意味なんだ。でも、お腹が出ててもだいじょうぶなんだ。」
と、瞬時に感情が切り替わったのを覚えています。
(のちに、でべその本当の意味は、お腹ではなくてヘソが出ている意味だということを知ります。笑)
私にはこういった記憶があちらこちらにあるために、
「赤ちゃんや幼い子は言葉を知らないから」
と、コミュニケーションをないがしろにすべきではないと感じています。
つまり、子どもは幼いがために語彙が豊富ではなく、その言葉の持つ意味を概念的には知らなくても、その言葉が自分に向けて発せられているということを理解したり、それがネガティブなものなのかポジティブなものなのかという部分は、幼くてもしっかりと感じ、受け取っています。
先日の記事には、コミュニケーションの際には私たちが言葉の受け手となったとき、投げかけられた言葉を判断し、解釈すると書きましたが、これは飽くまでも大人のお話です。
繰り返しになりますが、幼い子、特に、まだ言葉を発する前の子がまわりの人から言葉を受け取る場合、大人同士のそれとは少し違っています。
単純に図解すると、こんなイメージでしょうか。
幼い子は言葉の持つ意味はよくわからなくても、その言葉が持つ温度、つまり暖かみや冷たさを敏感に感じ取っているため、言葉がけの際に「できるだけポジティブな言葉を選ぶ」のは大事ではありますが、それ以上に大切にしたいことは、「暖かみのある使い方をする」ことだったり、「温度をこめて伝えようとする」ことではないかな、と感じています。
いくら表面上ポジティブな言葉を選んでいたとしても、親の側がイライラしていたり、その言葉を子どもに投げつけるように使ってしまうと、、、、、
幼い子の無防備なこころに、ぐさぐさと刺さっていくことにもなりかねません。
しかも、幼い子はこころが傷ついても表情や、態度には出てきません。
大人だったらカチンときて言い返したり、喧嘩に持っていくことだってできますが、幼い子はそれができず、ただただ受け取るだけ・・・
そういう言葉がけをされてイヤだ、という気持ちを上手に表現する術すら持ちませんから。
幼い子のお世話をしている時には、どうしても自分の時間が持てなかったり、育児が24時間労働で疲れきってしまうと感じることもあるでしょう。
もしも、子どもについついイライラしてしまう、あるいはキツい態度を取ってしまいがちだと感じている場合、自分にかかっているストレスが何なのか、どうしたらそれを取り除いたり緩和できるのか、を見つめてみる時間をもつと良いでしょう。
いくら子どもに優しくしよう、ポジティブな言葉がけをしようと決めて頑張ったとしても、ストレスが多くかかった状態ではうまくできなくて当然です。
そこでまた、「子どもに優しくできない自分はダメな母親だ」という思いを強めてしまったり、余計なストレスを増幅させてしまうことになっては元も子もありません。
火事の飛び火に水をかけるのではなくて、火元に対して対処しなければ、飛び火をなくせないことと同じです。
核家族化が進み、「密室育児」だの「孤育て」だのと言われることもあるように、育児って子どもが可愛いとか成長が嬉しいとかの、ポジティブな側面だけではありません。
育児に充てられる手が少ない分大変なことは多いですし、幼い子がストレスのはけ口となってしまうこともあり、親側のストレス管理はとても重要です。
カウンセリングは、こころが弱いから受けるのではありません。
定期的に健康診断を受けたり、温泉やマッサージに行ったりして自分の身体を自分で管理するのと同じで、こころの状態も健康に保つべく管理し、自分自身を慈しみ、よりよい人生を送るために活用できるもの。
つまり、✨自分の人生をより自分らしく輝かせて生きるためのもの✨なのです。
ぜひご活用くださいね。
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